お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~
 私はまた驚いて江上さんを見た。
 彼は優しく微笑して私を見ていた。

「行っちゃダメだよ! こんなやつ!」
 カズはまた彼を殴ろうとしている。

 彼はたぶん、すり抜けるのがわかってるからやっている。
 生きていたころの彼は、まったくそんな人じゃなかった。
 現に今、殴るふりだけでこちらをチラチラ見て止められるのを待っている。

「お酒は飲めないんです」
 私は断った。カズはホッとしたように手を下ろした。

 江上さんは探るような目を私に向けた。
「前は飲んでましたよね」
 会社の忘年会などで同席しているから、飲めることは江上さんも知っている。

「やめたんです」
「もしかして、妊娠してますか?」
 私の頬がひきつった。なんでわかるの?

「情緒不安定で急な禁酒、昨日、気持ち悪そうにしていたし、もしかしたら、と思って。こんなデリケートなこと、こちらから聞くべきではないのですが、すみません」

「いえ」
 私はまたうつむいた。

「相手の方には言いましたか?」
「それが……」
 彼氏が死んだなんて、言いづらい。

「別れたり……とか?」
「はい」
「別れてないよ!」
 カズが怒ったように言う。

 ちょっと黙っててよ。
 私はカズを見そうになるのを必死にこらえた。

「やっぱり、このあと時間をくれませんか。ここでは話しづらいでしょう」
「ですけど……」
 私は返事をためらった。

「一人で考え込んでもいい答えは出ませんよ」
 顔を上げると、江上さんは優しく微笑んで私を見ていた。
 いずれ、上司である彼には言わなくてはならなかったことだ。
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