お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~
江上さんは私を個室のある料亭に連れて行った。
その個室はテーブル席だった。
高そうだな、とそわそわしていると、江上さんは微笑を浮かべて言った。
「ここは私が出しますから気にしないで」
「そんなわけには」
「遠慮しないでください」
私は困って、結局、お礼を言った。断るのも失礼な気がして。
今日のおすすめコースを二人で食べた。
おいしいはずのそれらは、あまり味がしなかった。
江上さんは私の心をほぐすように楽しい話題をふってくれた。
こういうところ、さすがだと思う。
だから人気があるし、私も憧れてた。
食べ終わってデザートが出たタイミングで、彼は切り出した。
「今後のことですが……聞いてもよろしいですか?」
「はい」
私はうつむいた。
それきり、沈黙が降りた。
彼は私が言い出すのを待ってくれている。言わなくちゃ。でも、なにをどうやって。
「迷っています」
私はようやく、それだけを言えた。
私の言葉に、江上さんはただうなずいた。
「一人で育てていけるのかどうか」
言った直後に、涙が浮かんだ。
それ以上、なにも言えなかった。
カズがいたときには前向きになれていたのに。決心したはずなのに。
今ここに彼がいない。ただそれだけで、どうしたらいいのかわからなくなる。
江上さんは席を立ち、私の背を撫でてくれた。
そのまま、彼に押し付けるように抱きしめられた。
どうして!?
私は思わず顔を上げた。
そこには江上さんの優しい微笑があった。
「私にチャンスをくれませんか?」
江上さんの言葉に、私は目をまたたかせた。