本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 音を立てずに深呼吸をした。
 振り向と、彼女はこちらを睨みつけている。意識してゆっくりと微笑みを浮かべた。

「それは残念でしたね。ですがいい勉強になったのでは? 機を逸してしまえば、逃した魚は大きかったと嘆くことになる。重要な案件ほど迅速な判断を求められるというのは、どの業界でも同じではないでしょうか」
「なっ……! そんな大きな顔をしていられるのも今のうちなんだから! 私の方がかわいいし若いし、お弁当だってもっと上手に作れるの!」

 もしかしたら彼女は今日、彼のお弁当を見たのかもしれない。前回よりは断然上手にできていたせいで焦りを感じたとか?
 まさかね。前回がひどすぎただけで、今回でやっと人並みの水準になれただけだ。

 いくらなんでも自己評価が高すぎたかと我ながらおかしくなって、ふふっと声に出して笑ったら、菊池さんが見る見る目を尖らせた。

「今頃圭吾さんは、あなたが不倫女だとわかって離婚を決意しているはずよ!」

 自信満々に言い切った彼女に、はあっと大きなため息が漏れた。

「あの程度の写真で不倫の証拠になると思ったの?」

 浅知恵にもほどがある。多少はもめるかもしれないが、事実を伝えればいいだけだ。なんならさやかさんに証言を頼めばいい。事実無根なのでなにを言われても痛くもかゆくもない。
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