本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「圭君、待ってっ……」

 私の手を引いてズンズンと速足で進んでいく。こちらを振り返りもしない。

「お願い、なにか飲ませて! 家を出てからなにも飲んでなくて喉が」

 懇願するように言うと彼の足がピタリと止まる。近くのコインパーキングにある自販機でスポーツドリンクを買ってきてくれた。

「ありがとう」

 手渡されたボトルに口をつける。喉を冷たい水分が滑り落ち、体にスーッと染み込むようだ。生き返る。
 ほうっとため息のように深い息をついた次の瞬間、体がふわりと浮いた。

「きゃあっ」
「今のうちにしっかり飲んでおいて」

 彼は私を横抱きにし、それだけ言うと歩きだした。

 家に帰り着くなり寝室へ直行した。ベッドの上に私を座らせると、私の手からペットボトルを抜き取りサイドテーブルに置く。振り向いて私をじっと見下ろした。

 目が怖い。これは絶対本気で叱られるやつだ。黙っていなくなったことを怒っているのだろう。

「ご、ごめんなさい。ちょっと外の風に当たったらすぐに戻るつもりだったんだけど……その……ちょっと帰り道がわからなくなって……」
「それについてはまた後だ」
「え?」
「それよりも聞きたいことがある」

 眉間にしわを刻んで真剣なまなざしを向けられ、鼓動が速まる。こんなに険しい表情の彼を見たのはシンガポールでの再会のとき以来だ。
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