本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「誰が誰と別れるって?」
「え?」
「菊池さんにそう言っただろう」
「聞いてたの……」
「俺は別れるつもりなんてない」
「……例えばの話よ」

 そう口にした途端ハッとした。私、あの後なにをしゃべった……?

 記憶を手繰り寄せようとうつむいたら、彼がベッドの上に片ひざをついた。スプリングがミシリと音を立てる。すぐ目の前に彼の上半身が迫り、体がおのずとのけ反った。

「確かに俺はおまえが言った通り、菊池さんのことをすきになることはない。でもそれは、彼女が嫌がらせをするような人間だからではない」

 真剣な瞳に真っすぐに私を射抜かれ、息をのんだ瞬間。

「香子、おまえのことを愛しているからだ」

 大きく目を見張ると同時に、彼の手がトンと肩を押した。あっけなく背中からマットレスに沈む。
 私の顔の両側に手をつくと、彼は自分の体とベッドの間に私を閉じ込めた。

「……うそ」

 長い思考停止の末、頭に浮かんだ言葉がポロリと口からこぼれた。圭君がキュッと眉根を寄せる。

「うそじゃない」
「じゃあどうして? どうしてあの写真を見ても普通にしていられたの⁉ 一緒に映っていたのが結城……っ」

 突然口を手で塞がれて驚く。

「その名前は聞きたくない」

 思いきり不機嫌そうな顔で言われ、目をしばたたかせると、手が外された。

「どうして……」

 あのときはまったく意にも介していない様子だったのに……。
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