本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「い、嫌なわけないでしょ」

 かろうじてツンと横を向いて怒ったように言ったが、嫌だとはっきり言わなかった時点で敗戦が濃厚な予感しかない。あごに手を掛けられ、思いきり上向かされる。

「あ、あの」

 チュッ、と音を立てて唇を啄まれる。

「リップが剥げちゃう」
「大丈夫、塗らなくても十分魅力的だ」
「そろそろスタッフが呼びに来るわ」
「待たせておけばいいさ」
「そんなわけには――ひゃっ」

 両手で必死にタキシードの胸を押し返しながら顔を背けたら、耳の端をパクリと咥えられる。背中の手に腰をグッと押さえられ、反対の手がドレスの肩ひもをずらそうとしてくる。

 ど、どうしよう。このままではせっかく準備万端になったのに、挙式が始まる前に台無しになってしまう。
 肩ひもが両方とも二の腕に下ろされ、たわんだ布の合間から彼手が今まさに侵入しようとする。

「挙式が終わったらなんでもするから! 今はがまんして!」

 叫ぶと同時に、呼び鈴が鳴った。スタッフが迎えに来たのだ。
 どうにかスタイリングを乱されることなく挙式を迎えられそうだとホッとしつつ、差し出された腕に手を掛けて部屋を出た。
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