本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「お兄ちゃんは? 弁護士になったんでしょう? どんな仕事をしているの?」

 彼の実家は三代続く法律事務所で、現在は彼の父親が二代目所長を務めている。彼自身も後を継ぐつもりで大学へ入ったはずだ。

 その後無事に弁護士資格を取得したところまでは家族伝手に聞いて知っていたが、私も入省して忙しくなり詳しい内容までは聞いていない。
 弁護士にはそれぞれ得意としている分野があるそうなので、単純に彼がどんな案件を取り扱っているのか気になった。

「言える範囲で構わないけど」
「そうだな。ざっくり言うと、顧問弁護士として受け持っている企業の、法的コンサルや海外企業との業務提携の手助け、かな」
「海外企業と……ってことはもしかして、外国の弁護士資格も持ってるの?」
「ああ。うちの事務所は海外の弁護士資格取得に力を入れているからな。俺は主にEUとアジア圏担当だ」
「じゃあここにも仕事で?」

 だとしたら仕事の邪魔をしてしまったということだ。申し訳なさが募る。

「いや、来たのは仕事がらみだけど、思ったよりも早く済んだからそのまま休暇を取ってのんびりしていたところだよ」
「そうだったんだ――あ、ここよ、私の部屋。送ってくれてありがとう」

 ドアを背に、彼に向かって頭を下げる。「じゃあ」と背を向けようとしたとき。

「じゃあまた五十分後に来るから」
「え?」
「俺もホテルとの話に同席する」
「でも」

 せっかくの休暇に半分仕事のようなことをさせるなんて申し訳なさすぎる。いくら幼なじみだからといっても、彼の仕事領域にずかずか踏み込むわけにはいかない。親しき仲〝こそ〟礼儀あり、なのだ。
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