本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「ひとりで大丈夫だから」
「どうせ証拠動画の提出が必要になる。一度に済ませた方が楽だろう」

 結局のところ私も彼と一緒の方が心強く、不本意だけど「お願いします」と頭を下げた。

 それから五十分後。部屋のドアから〝コン、ココン、コン、コン〟と独特なリズムのノックが聞こえてきた。

「はーい!」

 駆け寄ってロックを外し、ドアを開ける。立っていたのは予想通りの人だった。

「圭吾お兄ちゃん、どうぞ」

 ドアを大きく開いて中へ招き入れる。
 約束の時間ギリギリのところで、荷物の片付けまでなんとか終えることができた。一時間足らずで、シャワーからの身支度、そして部屋まで整えた自分を褒めてやりたい。

「ちゃんと確認してドアを開けたのか?」
「えっと、合図でお兄ちゃんだってわかったわよ?」
「こら。たとえそうでもきちんと確認しないとだめだろう。女性ひとりなんだ、用心に用心を重ねるくらいでちょうどいい」

 ちょっと過保護すぎやしないだろうか。他人と区別がつくようにとノックの仕方まで決めたのは彼なのに。

 反論したかったが、どうしてこうなったかを思い返せばうなずくほかない。「気をつけます」と言ったところで、呼び出し音が聞こえてきた。
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