本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「これか?」
「う、うん。ありがとう」

 昔とは違う大人の香りをまとった彼に、ぎくしゃくと返事をした。

 一緒にソファーまで戻り、彼が三人掛けのソファーに腰を下ろしたので、私は九十度になるようひとり掛けの方に座る。
 張りのある座面とふかふかのクッションの座り心地のおかげで、ざわざわした胸の中が徐々に凪いでいく。カジノのイスとは大違いだ。

 買ってきたサンドイッチやローストビーフ、チーズやサラミをお皿に盛り付け、スナック菓子やナッツも出したら、昔、子どもだけでお菓子パーティをしたときのことを思い出し、気分が高揚してくる。目を輝かせた彼も同じことを思ったようだ。

「なんだか子どものときを思い出すな」
「飲み物は大人向けだけどね」
「確かに」

 クスリと笑う彼のグラスにビールをつぐ。

「なにに乾杯する?」
「そうだな……十年ぶりの再会とカジノでの勝利に」

 お互い顔を見合わせてクスクスと笑う。

「乾杯」

 グラスを持ち上げた後、口をつける。ゴクゴクと喉を鳴らした直後、ハッとした。

「あぁっ!」
「どうした、突然大きな声を出して」
「あ、ごめん――じゃなくてっ、賭けがまだだったわ」
「ああ」

『なんだそんなことか』とでもいうような相づちにハッとする。

「もしかして、最初からそのつもりだったんじゃ……」
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