本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「だって昔から相当モテてたじゃない」
「そうでもない。仮にそうだとしてもふた股をかけたことなんて一度もないぞ」

 知っている。お兄ちゃんはいつだって誠実だ。遊びで女の子と付き合ったりしない。
 だからこそショックだった。

『今度はその人のことが私より大事なんだ』

 そう思ったら、その位置に立つことのできない妹ポジションが虚しくてたまらなかった。

 いっそ遊びだったらよかったのに。そしたら〝彼女〟より〝妹〟の方が彼にとって大事なのだと思える。

 そんなひどいことを考えてしまう自分が嫌になったのもあり、彼のことを諦めることにしたのだ。

「冗談よ。圭吾お兄ちゃんはそんなことしないってわかってる。奥さんになる人は幸せね」
「だといいな。でもまずは、その相手を探さないとな」
「うそ」

 思わず口にすると、彼が眉をしかめる。

「うそなんてついてどうするんだよ。ここ数年は仕事ばかりで恋愛に回す余力がなかったんだ。日本に戻ったら本格的に紹介を頼もうと思っているくらいだ」
「それって、お見合いするってこと?」
「ああ」

 ガツンと頭を叩かれたような気がした。
 三十三という年齢を考えたら結婚願望が強くなってもおかしくはない。けれど彼なら相手には困らないはずだ。それなのにどうして。
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