本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 談話コーナーにあるベンチの端に座り、自動販売機で買ったレモンティを飲む。乾いた喉を冷たい感触が通って気持ちがいい。レモンと紅茶の爽やかさと、ほどよい甘みがひと仕事終えた私の体に染み込んでいるようだ。

 すぐ横の窓から見えるアスファルトに、街路樹が濃い影を作っているのを眺めながら、すこしぼうっと頭を休める。

 今日の夕飯なんにしよう。
 圭君は仕事で遅くなるため食べたり食べなかったりまばらなので、基本的には平日は用意しなくていいことになっている。その分休日はふたりで一緒に作ったり食べに行ったりすることが多かった。

 今まで仕事ばかりしてきたので、料理のレパートリーはあまり多くない。それこそ卵焼きを焦がしてしまうくらいのレベルだ。

 でもあれは、動揺していたせいだもの。

 だれに向けた言い訳をしているのか自分でもわからないが、もう少しきちんと料理を勉強した方がいいのは確かだ。
 今日はこっそり練習をしておいて、うまくいったら休みの日に彼に作ろう。

「お疲れ様です」

 不意に声をかけられ振り向いた。入り口のところにかわいらしい雰囲気の若い女性が立っている。

「菊池さん。お疲れ様です」

 軽く会釈をすると、向こうも同じように返してくる。彼女はまっすぐに自販機へと向かったので、メニューを検索しようとスマートフォンの画面に指を滑らせた。
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