本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
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 セミナーが無事終了し本省へと戻った私は、課長に帰庁報告を済ませてすぐに報告書作成に取りかかった。

 成果はまずまずと言ったところだろう。講演後の各部門に分かれた相談受付会では、私の担当する外務省ブースを含め、どのブースもひっきりなしに人が訪れていた。その中でもひと際賑わっていたのは、松崎法律事務所のブースだった。

 そりゃあ、あの講演を聞いた後なら、間違いなく行きたくなるわよ。
 圭君の――いや、〝朝比奈弁護士〟の講演はそれくらいすばらしかった。

〝法律事務所〟といえば敷居が高くお堅いイメージを持つ人も多いと思う。実際私も弁護士としてのスピーチは、アウトバウンドに必要な法務の話をメインでするのかと思っていた――が。

『それに関しては参考となる書籍を後ほどご紹介いたしますので、ここでは割愛いたします。ご質問などございましたら、講演の後ブースにお越しくださいね』

 いつもの爽やかで親しみやすい笑みを会場に向ける。まるで敏腕営業部員の業だ。

 自身の海外体験談を交えながら日本との法律の違いを語る。だれもがわかる語彙を使った軽快なトークに、多くの来場者が引き込まれていくのを、私は会場の片隅でひとり見惚れていた。
 講演終了後に『彼の話をもっと聞きたい、相談に乗ってほしい』そう思った人が押し掛けたのも納得である。
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