本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 顔を上げて課長席の後ろにある大きな掛け時計を見ると、定時を十分ほど過ぎている。
 報告書の作成は先輩が途中まで作っていたものがあったため、比較的速やかに完成させることができた。代理業務は無事済んだが、本来業務がまだ残っている。今日は金曜日。週明けの業務開始をスムーズにするためには、今日中に片づけておくことがマストなものがある。

 正直、今日はこの時間にしては集中力が足らない。いつもと違う神経を使ったからだろうか。
 そういえば、今日は帰ったら料理の練習をしようと思っていたんだっけ。
 そんなことをふと思い出し、どっと疲れが押し寄せた。

 今日はもう無理だわ……。

 今から帰って再び慣れないことを始めるのは得策ではない。おとなしく諦めて、冷凍庫にストックしてあるドリアでも食べることにしよう。こういう日は何もせず、お気に入りのアロマ入浴剤を入れた湯舟にゆっくり浸かるに限る。
 そう決めたせいか集中力が増した私は、短時間で仕事を片づけ、荷物をまとめて席を立った。

 退庁の挨拶をして課を出る。時刻は六時四十分。日が沈む前に退勤するなんて久しぶりだ。

 茜色に染まる窓の外を見ながら廊下を進んでいると、室内から出てきた人と目が合った。
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