本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 もともとが幼なじみなので基本的に仲は悪くない。むしろいい方だと思う。年の差のわりに気安く話せるのは、子どもの頃からお互いをよく知っているからだろう。

 なんだかんだで彼は私に甘い。
 今朝のことだってそう。本当なら彼だって不満を口にしてもいいはずだ。あんなきつい言葉を投げつけたせいで、彼に罪悪感を与えてしまった。
 それなのに彼は一切私を責めず、自分が一方的に悪かったと謝ってくれた。

 もしかしたらこの食事もあのときのお詫びかもしれない。そう考えたら胸がズキンと痛む。

 傷つけたかったわけじゃない。仕事の邪魔をしたかったわけでもない。

 どうして私はいつもうまくできないのだろう。

「どうした、香ちゃん。酔ったのか?」

 彼の声に、思考の沼に沈んでいた意識が引き上げられる。

「ううん、ちょっとぼうっとしていただけ」
「イレギュラーもあって疲れたんだろう」

 そろそろ出ようかという彼の手元を見たら、グラスすっかりは空になっている。私も最後のひと口をあおった。

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