君のブレスが切れるまで―on a rainyday remember love―
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 リムジン車の窓から、移りゆく景色を眺める。まるでコンクリートでできたジャングル。建物に設置されている巨大なモニターには、あるコマーシャルが流れていた。
 ミヤノジョウグループのものだ。的確に人が欲しがりそうなアイテムを、広告として存分に押し出している。
 品質がよく、かゆいところに手が届くような機能を備えているため高くても売れるのだ。何より『すべての家電を絶対これにしたい』という狂信者が多数存在していた。ミヤノジョウグループの家電を掛け合わせることで相乗効果が生まれるからでもある。
 人が何を欲しがるのか。私の理論を用いて作られたのだから、誰もが欲しがるのは当たり前だった。


 それなのに、私は……私自身は何が欲しかったのだろう?


 冷たい建物が立ち並ぶきらびやかな街を抜け、橋を渡り、一時間もすれば流れる景色は大きく姿を変えていた。長く伸びる線路、田んぼや畑が広がる平原に。
 この辺りの人々には悪いけど、都会の中心で死ぬよりはいい場所かもしれない。


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