君のブレスが切れるまで―on a rainyday remember love―

第3話 脅しの道具

 2010年 6月


 歳が九つになっても、未だにあの日の感情の意味を知ることはできなかった。あの子に届かないと思うたびに、情けないほど自分が欠陥品であることを思い知る。
 あれからまた両親に連れられ、海外へと戻ってきた私は全てに明け暮れた。飛び級制度で学年を上げていき、勉強の難度は今までの比ではない。
 だけど、それでは意味はなかった。


 どんな数カ国の言葉を習得しても、全てを言葉にしきれない。
 どんな数式を覚えても、気持ちは数字で表せない。
 どんな科学を記憶しても、私の感情は覗けない。
 どんな心理学を選考しても、この眼の力に及ばない。


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