君のブレスが切れるまで―on a rainyday remember love―
 名前のわからないあたたかさを胸に秘める。この意味を探すことを生きる理由に変えてみたいと思ってしまった。
 答えが出せるかどうかはわからない、感情を理解することは今の私にはとても難しいから。言葉選びとしてならばそれが最適だろうと思うことはできても、喜びの理由、怒りの意味、哀しみの涙、明日への楽しみ。意味がわかっていても、その気持ちがわからない。


「……かなで」


 パラパラと雨が奏でる傘の下。その音楽が降り止んだとき、私は初めてできた友達からもらった傘を大切に畳む。


 ――それでも私の心に芽生えたとてもあたたかい『感情』。これはきっと、嘘じゃない。


 取っ手で揺れていたネームプレート。そこには、あの子が書いたと思われる可愛い文字で『あかさか かなで』と綴られていた。
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