君のブレスが切れるまで―on a rainyday remember love―
 §


 宮之城の屋敷から都会のこちらへ移り住んで、早一ヶ月。
 総一朗のおかげで彼女の住む街を掴んだのはいいのだけれど、納期を半分にするなどそもそもが無茶。結果、精度が少々甘くなってしまい、目的の子と同じ中学校に入ることはできなかった。
 それもそのはずだ、学校というのはそれなりに多い。ピンポイントで同じ学校へと入れたのならば運命を感じられたかもしれないが。
 あの時点で受け入れてもらえる学校はここだけだった。つまり、私の運はこの程度。ならば、後は実力で集めるしかない。ほとんどの情報がないうちから、それでも街を絞り込めたのだ。後は周辺中学校に赤坂 奏という人物がいるかどうか調べるだけで、例の子は出てくるだろう。
 宮之城の娘という自分のカムフラージュとして移り住んだ古いアパートの二階。PCに手を掛けたまま、肩を落とす。


「……私は会うことを躊躇しているのね。運というものを盾にして、あの子の顔を見るのをためらっている」


< 58 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop