君のブレスが切れるまで―on a rainyday remember love―
 私は転入するにあたって、自分の経歴を隠すことになった。
 宮之城という名は国内でそれなりにある名前だと考えているが、事情を知ってしまう可能性のある教諭から目をつけられるのは願い下げ。
 特異な眼の影響で、奇異の眼差しを向けられている方が心地よいくらいだ。


 海外には私よりも幼く、トントン拍子で飛び級を行う人物は多少なりともいる。
 それは富豪の子であったり、天才とうたわれる子だったり。
 人は自分よりも上の人物を見ると、妬みが生じる。たとえ大人であっても、だ。逆に下を見ると安心感を得られる。


 私はどちらを見ても何も感じることはできないが、世間は違う。宮之城の娘、そして学歴。これだけで無駄な敵を作る。だからこそ余計な詮索や羨望、期待や妬みなどは向けられたくない。教師にも生徒からも。
 この中学校生活はただの足がかり。情報が出揃い、探し求める人物と違ったのなら早々に撤退しよう。
 自己紹介が終わったところで疎らに拍手が飛び交う。そして願い通り、眼の力は私を人から遠ざけてくれた。積極的に関わろうとする人たちがいなかったことに感謝だ。


< 57 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop