契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「……僕が冗談で済ませている間に、仕事に戻りなさい」
「そんなこと言っていいの? 社員の大半は私たちを恋人同士だと思っているわ。勿論、私の父も。それなのにこの私を邪険に扱えば、東雲さんの方が非難されると思うけど?」

 脅迫だ。
 希実は無機物になりきって我関せずを貫きたいのに、つい彼らへ視線をやってしまった。
 そこには花蓮によって壁際に追い詰められた東雲がいた。どうやら床に積まれた段ボールに足を取られたのか、体勢がやや傾いている。
 その隙に、花蓮が自らの手を壁につき、東雲を閉じ込めている形だった。
 二人の距離がぐっと近づき、今や胸が触れてしまいそうだ。
 押し退けるのを躊躇っているのか、東雲の眉間には深い皺が刻まれていた。

「私のこと、突き飛ばす? でもそうしたら暴力を受けたと訴えてしまうかも。それとも襲われそうになったと証言しようかな?」

 ――怖……っ

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