契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 惑乱する希実は、ひたすら頷く以外できなくなった。

「部屋へ入ってください。見送ります」
「い、いいえっ、見送りくらい私にさせてください」
「でも、希実さんが部屋に入るのを見届けないと心配です」
「ほ、本当に大丈夫ですから……! こんなところまで送っていただいただけでご迷惑をかけているのに。それに、この辺り治安はとてもいいんです」

 軽い押し問答の末、最終的に彼が折れてくれた。
 つまり希実が東雲を見送ることに納得してくれたらしい。非常に渋々ではあったが。

「では、お休みなさい。希実さん」
「お、お休みなさい……」
「僕が行ったら、すぐに部屋に入ると約束してくださいね。背後には充分気を付けて」

 甘い美声が鼓膜を揺らす。心の奥まで沁み込む優しい響きが、希実の内側で何度もリフレインした。
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