契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 母の号令の下、希実と愛実が動き出す。
 台所へ立った希実の背後へ、妹がそっと近寄ってきた。

「……お義兄さん、いい人だね」
「え?」

 囁く声に驚いて振り返る。すると愛実がニコリと微笑んだ。

「お姉ちゃんのことよく分かってくれている。それにお父さんとお母さんの戯言から庇おうとしてくれていたじゃない」

 地元に完全に馴染んで見える妹でも、思うところはあったらしい。
 まだ膨らみの目立たない下腹を撫で、愛実は器用に片眉を上げた。

「あんまり見てくれがいいから、てっきり根暗なお姉ちゃんを支配しようとする、顔だけのいけ好かない輩かなと思っちゃった。だけど安斎さん、ちゃんとお姉ちゃんを理解してくれている。案外お姉ちゃんって、男を見る眼があったんだね。それに男運限界突破していない?」
「何て言い方するのよ」
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