契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「うふふ。優等生のお姉ちゃんが、私昔から自慢だったよ。私には都会で就職なんて思いもつかなかったけど……お姉ちゃんは自力で叶えた。お父さんの寝言なんて気にしないでいいよ」

 妹がそんな風に自分を思ってくれていたとは知らなかった。
 愛実は勉強が苦手で、度々問題を起こすことはあったが、それでも両親の期待に応えてきたのは彼女の方だ。
 希実はこの地域の価値観に照らし合わせると、親不孝者だった。
 きっと妹からも『長女のくせに』と呆れられているものだと、勝手に身構えていたらしい。
 誤解が解け、肩の力が抜ける。
 漏れ出た吐息は、どこか気が抜けていた。

「おめでとう、お姉ちゃん」

 含みのない純度百パーセントの祝辞が温かい。
 けれど祝われるべき結婚自体が、嘘の塊だ。
 家族を騙している自分には愛実から祝われる権利がないと思うと、希実は「ありがとう」の言葉が喉に絡み、流暢に発音できなかった。
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