契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~


 諸々あったが、両親への挨拶は済んだ。
 となると次のミッションは引っ越しである。
 日曜日のみでは荷づくりが終わらないため、もう数週間は問題を先送りできると希実は踏んでいたのだが。

「とりあえず身一つで来ればいい。荷物は追々運べばいいですよ。どうせ家具はこちらで新調するつもりでしたので、当座に必要なものだけ移動してはどうですか。変に時間をかけても仕方ありませんし、結果が同じなら善は急げです」

 と言われて、反論の余地はなかった。
 にこやかな顔で東雲に迫られると、何故か逆らえなくなるのだ。

 ――これが生まれながらにして、上に立つべく育てられた人間と、一般庶民の差かもしれない……

 そうでなくとも人と討論するのが苦手な希実に、勝ち目があるわけがなかった。
 しかしこの一連の経緯を人に話しても、冗談だと笑われそうである。
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