契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「何か盛り上がっていたみたいですね」

 常に丁寧に話す彼が、周囲を見回しつつ穏やかに問いかける。けれどその声音は微かな冷ややかさを孕んでいた。

「たまには社食で昼食を取ろうと思ったのですが、雰囲気が妙ですね」

 口調は普段通りと変わらない。
 それなのに無視しきれない硬質さが潜んでいた。
 特に希実を取り囲んでいた女性三人が、ビクッと肩を強張らせる。
 漂う緊張感に気づいたのか。自分たちに向けられた『何か』を敏感に感じ取ったのか。
 それは彼女たちのすぐ傍に立っていた希実にも、嗅ぎ取れた。

 ――東雲さん、怒っている……?

 明確な感情の発露はないものの、そこはかとなく彼の苛立ちが伝わってくる。
 とは言え、仕草も声のトーンもいつも通り。むしろ落ち着き払っている。
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