契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 にも拘らず、東雲が一歩ずつ近づいてくる度に、締め付けられているかの如く息が苦しくなり、全身が粟立って、冷たい汗が背中に滲んだ。

 ――怖い。

「あ、安斎さんがご結婚されたと聞いて……ほ、本当かどうか聞いていただけです」

 希実を問い詰める時には居丈高だったのが嘘のように、秘書課の女性は青ざめて声を震わせた。
 その両脇の二人も、蒼白で頷いている。
 野次馬のその他大勢に関しては、『我関せず』と言いたげに視線を逸らし無関係を装っていた。

「そうなんですか? 僕に直接問い合わせてくれればいいのに。でもあまりプライベートに口出しするのは褒められたことではありませんね。ハラスメント研修を徹底した方がよさそうです」

 怜悧な笑顔は、人を竦ませるのに充分だった。
 魅力的でありながら、圧がある。
 温もりのない双眸が冷淡で、口角が上がれば上がるほど恐ろしい。
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