契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 美形の『眼が欠片も笑っていない笑顔』がこんなにも恐怖を呼ぶものだと、希実は初めて知った。

「――希実、おいで。二人きりで話したいことがあるんだ。そのために迎えに来た」

 この場の空気を支配した東雲が、こちらに手を差し伸べる。
 やや芝居がかった仕草は、見せつけているのが明らかだった。
 どれだけ彼が希実を大切にしているか。特別な関係であることを言動で物語っている。
 彼は仕事とプライベートをきっちり分けるタイプだ。共に過ごした時間は短くても、公私混同する人ではないことを、希実は分かっていた。
 だからこそ、悟る。

 ――あ……私のためにパフォーマンスしてくれているんだ……

 今後、希実が絡まれないよう、釘を刺している。
 言外に『大事な妻に手を出すな』と警告していた。

 ――彼がそういうことをする人だとは思わなかった……

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