契約結婚か   またの名を脅迫
「嬉しい……です……っ」
「がんばってくれて、ありがとう」

 労わりの口づけは、これまでのどのキスよりも甘く濃厚だった。
 抱きしめられて、心まで包まれたのを感じる。こんな幸福感を味わうのは初めて。
 うっとりとし、希実自ら彼へ視線で口づけを乞うた。
 拙い要求に東雲は笑みを返してくれる。望んだ以上のキスは、紛れもなく愛し合う者同士の切実さだった。

「幸せ過ぎて、嘘みたいだ」

 それはこちらの台詞。
 夢中で唇を重ね、微笑み合いながら一つになれる奇跡を味わった。

「ん……ぁ……っ」
「希実……っ」

 偽りの婚姻が真実になった夜が更けていく。
 この夜は一生忘れならないものになる――そんな予感を抱き、希実は東雲に全身で愛を告げた。
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