契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 せっかく息苦しい地元を離れ、都会の華やかさに馴染めなくても、ホッとできる自分のための生活を手に入れたのだ。
 今後も静かで平穏な暮らしを維持したい。
 そのためなら勇気を掻き集めて、眼前の男と視線を合わせられた。

「私はただこの倉庫に仕事をしにきたのです。それなのに突然お二人が私用で揉めだした驚きを、少しは想像していただけませんか?」

 あくまで、就業中にサボっていたのはそちらである。そう言外に滲ませて、希実は口から飛び出しそうな心臓を宥めすかした。

 ――私に非はない……はずだよね?

「そ、それに私は今のことを口外する気は一切ありません。噂話は苦手ですし……そもそも社内にそんな話をするほど親しい相手はいません。社外の友人は知らない人のゴシップを聞いても興味がないでしょうし……! 無責任な他人の噂なんて友達も聞きたがりません!」

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