契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 職をなくした希実が戻れば、当たり前のようにそんなレールに再搭乗させられるに決まっていた。
 あの田舎では、女性が高学歴なのは小賢しくなるだけのマイナス要因でしかないのだ。
 難関大学卒の希実は、その時点で『難あり』と評価付けられる。

 ――この会社をクビになるわけにはいかない。どうにかして私が覗いていたのでも、悪意を持っているのでもないと安斎さんに分かってもらわなきゃ……!

「あ、あの、私……」
「あまりいい趣味とは言えませんね」
「趣味ではありません! む、むしろ見たくもないものを見せられて、こっちの方が被害者です」

 ひたすら下手に出て穏便に事を修めようと希実は考えていたが、あまりの言われようにほんのりカチンときてしまった。
 それでも普段ならこんな風に言い返したりしない。上手く反論なんて出てこず、口籠ってしまう。
 だが今はそんなことを言っていられない状況だった。

 ――だって黙っていたら、人生の墓場コースまっしぐら……!

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