契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 少し前なら、希実は花蓮の言葉に怯んだかもしれない。
 だが今は、東雲との関係が『全て嘘』ではないことを、誰よりも己自身が知っていた。彼のくれた温もりを思い出し、俯かずに済むくらいには。

「……何か誤解なさっているみたいですが、私たちはきちんとした夫婦です」

 契約だけではなく、互いの間には信頼関係がある。
 心と身体を重ねたことで、以前より希実は慄かずに済んでいた。

「……は? ちょっと見た目がマシになったことで、勘違いしているみたいね。東雲さんのおかげで着飾れただけなのに、馬鹿みたい」

 痛いところを突いてくる。
 実際、希実の頭から爪先まで、自分で金をかけたとは言えない。全て彼が支払いを済ませてくれていた。
 デートを楽しみ帰宅してから何度も自分で払うと告げたのだが、東雲は頑として一円たりとも受け取ってくれなかったのだ。
 その後も彼からは、あれこれと贈られっぱなし。
 貢がせていると誹られても、希実に反論の余地はなかった。

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