契約結婚か   またの名を脅迫
 どうりで安斎家の両親が、一般家庭出身で秀でたところのない希実をアッサリ認めてくれたはずだ。
 いずれ西泉小百合との縁談が復活することを願っていたなら、繋ぎの道具は簡単に捨てられるものの方がいい。
 東雲も同じ考えでないと、希実に言い切れる自信はなかった。
 逆に、全てが腑に落ちてしまった。
 もしかしたら、本当に彼が自分を気に入ってくれた部分はあったのかもしれない。けれど『本物』が戻ってくるのなら、『偽物』に用はない。
 夢の終わりが近づいてくる足音が、聞こえた気がした。

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