塩系男子のステルス溺愛 クールで無愛想な義兄が、なぜか私にだけ甘すぎる件
 たすくの頭にある一番古い記憶は、母親の葬儀だった。
 母親のことは覚えていない。
 親族や知人の前では気丈に振る舞っていた父親が皆が帰ったあと激しく号泣していた。
 強くて優しい父親は、幼児のたすくには全知全能の神様みたいなもので、その父親が泣きじゃくり声をあげる様を見て天地がひっくり返るような衝撃を受けた。

 亡き母への深い愛情と、喪失の痛み。

 親父が泣くのを見たのはあとにも先にもあれっきりだった。
 それはたすくに愛情への憧れと畏怖を植えつけた。

 父親は多忙でもたすくに手間も愛情も惜しまなかったが、やはり1人では限界がある。
 子供ながらに、負担はかけまいと自分のことは自分でできるよう頑張った。
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