前世恋人だった副社長が、甘すぎる



だけど川原さんはサングラスをかけたまま、前を見つめて告げる。


「そんなことないよ。

確かに僕は川原電機の跡継ぎだけど、穂花ちゃんのほうがスキル高いよ」



この御曹司は、私の食事のマナーが完璧だったことや、プロ並みのバイオリン技術をまだ僻んでいるのだろうか。

もちろん川原さんには言わないが、私は人生二度目だ。

一度目の人生では、お嬢様マナーをみっちり叩き込まれた。テーブルマナーや社交ダンス、バイオリン、ピアノ、語学まで……

当時は学校なんてなかったようなものだから、一日中家庭教師にレッスンを受けた。

そして今、二度目の人生だ。



「ありがとうございます。

庶民ですが、実家が厳しくて……」


私はまた、大嘘をつく。


「庶民なのにすごいよ。

庶民とか馬鹿にしてごめんね」


嫌味にも聞こえるが、川原さんはきっと心からそう思ってくれたのだろう。


「怜士が惚れたのも分かる」


胸がズキンとする。


「あ、でも、今は怜士の話題はいけないね」


川原さんはそう言って、これまた大きなホールの駐車場に車を停めた。

< 182 / 258 >

この作品をシェア

pagetop