前世恋人だった副社長が、甘すぎる
「穂花ちゃん、クラシック好きでしょ?
今日ここでウィーン交響楽団のコンサートがあるんだよ」
川原さんはそう言って、助手席側に回って扉を開いてくれる。
この紳士な態度も怜士さんと同じだ。そう思って首を振る。
いけないいけない、怜士さんのことを考えては!
「今日はベートーヴェンの交響曲の演目だって」
「えっ!そうなんですね。楽しみです」
なんて無理矢理作り笑顔をすると、
「穂花ちゃんなら喜んでくれると思ったよ」
川原さんはこれまた明るい笑顔で笑った。
そして、当然のようにチケットを二枚出す。
チケットはもちろん一番いい席で、その価格は二万円を超えているようだ。
だけど、川原さんにとっては痛くも痒くもないのだろう。
「チケットまですみません……」
申し訳なさでいっぱいの私に、
「いいんだよ、穂花ちゃんが喜んでくれれば」
川原さんは告げた。