前世恋人だった副社長が、甘すぎる
「誰か見つかるといいね」
なんて言ったが、泉は結構な真顔で私に聞いたのだ。
「ねえ穂花、ピアノ弾けない?」
「えっ!?」
ピアノはもちろん弾ける。
おまけに、私は二十五歳にして、すでに四十五年の人生を生きていることになっている。
前世では楽器のレッスンが忙しく、ピアノはすでにそこそこのレベルを極めていた。
そして今世、何も知らない私は、ピアノを前に思い出したように弾き出したのだ。
五歳の女の子がいきなり子犬のワルツを弾き始めるから、両親はひっくり返っていた。そして神童と崇められ、ピアノを続けたのだ。
成長期特有の物覚えの良さで、私のピアノの腕はぐんぐん上達した。
だからきっと、かなり出来る。
バイオリンよりも、さらに。
だけど、私はクラシックに興味がなかったのと語学がしたかったので、大学は音楽方面には進まなかったのだ。