前世恋人だった副社長が、甘すぎる




怜士さんのこんな感情剥き出しの顔を初めて見たし、怜士さんにこんな顔をさせるピアニストは天才だ。


「お上手ですね」


怜士さんのお母様が言う。


「うむ、何とも切ない……」


お父様が頷いた。



やがて照明が上がり、ピアニストが立ち上がって礼をする。

会場は割れんばかりの拍手喝采だ。

私も立ち上がって無心に拍手をしていた。


「あのピアニストに、今度会社の懇親会でも弾いてもらうか」

「ええ。従業員も感動するでしょうね。

それにあの佇まい、まるで上流貴族のようだわ」



そう、遠くからでも、ピアニストが凛と背筋を伸ばして立っている姿が尊く思えるほどに。

だけど切なげな演奏とは打って変わり、話しかけるギャラリーに笑顔で対応している。

その笑顔がまた可愛い。



「あれ?先ほどの外国人の男性とも話しているわ」


そう、何語を話しているのかすら分からなかった男性と、ピアニストは笑顔で談笑なんてしているではないか。

おそらくその男性がリクエストでもしたのだろう、ピアニストは再び椅子に座り演奏の準備に入る。



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