前世恋人だった副社長が、甘すぎる
そんななか……不意に会場の照明が暗くなり、ピアノにスポットライトが当たる。
いつの間にかそこには女性がいて、深々と頭を下げる。
紅いドレスがきらきらと光り……麗しい、その言葉がぴったりだった。
そして彼女は椅子に座り、ピアノを奏でた。
一曲目『愛の夢』。
誰でも聴いたことのあるようなこの有名で難しい曲を、彼女は弾いた。
私も一応社長令嬢だ。それなりにクラシックは分かるが、このピアニストはとても正確にこの難曲を弾きあげていることが分かる。
そして、そのピアノの音色は切なくて、特に甘っぽいその主旋律に聴き入ってしまう。
溢れてしまいそうな愛しくて切ない感情が湧き起こる。
二曲目『別れの曲』。
やっぱり胸がぎゅーっと痛む。
この人のピアノは、どうしてこうも悲しげで切ないのだろう。
ピアノを弾いているだけなのに、まるで恋人と引き裂かれたような気分になる。
ピアノを弾くその雰囲気すら切なげで、気を許せば泣いてしまいそうだ。
そんなピアニストを、怜士さんはずっと見ていた。
まるで泣いてしまいそうな顔をして。