凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 支度を終えて小さなバックをしっかり持ったところで、エリンから「居間でお待ちくださいね」と言われ、ルーリアは先にそちらへと移動する。しかし居間に到着すれば、ソファーでセレットがイビキをかいて気持ちよさそうに眠っていた。
 眠りの邪魔になったら嫌だなという気持ちと、でも居間で待っていてと言われたこともあり、入り口のところで立ち尽くしていると、後ろから「ルーリア?」とカルロスから声をかけられた。

「セレットさんが眠っていらっしゃって、中に入って起こしてしまったら申し訳ないなと思いまして」

 振り返ると、カルロスが不思議そうな顔をしていたため、ルーリアは居間に入らない理由を伝える。しかし、それでも彼が自分をじっと見つめてくるため、ルーリアは大きく戸惑う。彼の青い瞳が、着ているドレスの方へ移動したことで、ようやくルーリアは理解し、頭を下げた。

「カレン様のドレスをお借りしました。実は他にも寝巻きとか色々着させていただいております。勝手にすみません」

 クロエラが訪ねて来たその夜に、エリンが「よかったら、これもどうぞ」と衣類を両手いっぱいに抱えて部屋にやって来たため、クローゼットの中身が一気に充実したのだ。
 そして、つい先ほど着たばかりの白と淡いピンク色のドレスへと、ルーリアは改めて視線を落とす。レースやリボンやフリルがふんだんに使われていて、とっても可愛らしいドレスだ。エリンには「可憐だわ!」と褒めてもらったが、自分に似合っているように思えなかったルーリアは、カルロスのどことなく冷めた眼差しにやっぱりと心の中で納得する。

「お見苦しいと思いますが、エリンさんが髪まで整えて下さっていますし、今日だけ我慢してもらえたら嬉しいのですが」
「……え? あっ、いや。違う」

 ルーリアが体を小さくさせてお願いすると、カルロスはハッとし、小刻みに首を横に振る。

< 122 / 229 >

この作品をシェア

pagetop