凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
魔力紋を偽るのは重罪であり、数年に一度、当主に魔力を発動させて一族の魔力紋に変更がないかどうかの確認も行われている。それは城の中で、役人や騎士団員たちが目を光らせている中で行われ、魔力紋を故意に変えたりすれば不自然な魔力の流れから簡単に見破られる。偽ることなど無理だろうとカルロスは自分の発言に眉を顰めた。
しかし、エリオットはあっけらかんとした口調で断言する。
「偽りの線が濃厚だろうな。闇と水の魔力紋は一致している」
「……それって魔力紋は変えていないということですか?」
「ああそういうことだ。ってことは、役人と騎士団員が無能か、もしくはあえて見過ごしていることになる」
役人もしくは騎士団の仲間の中に闇の魔術師と通じていて、力を貸している者がいるかもしれないと考えれば、カルロスの中で一気に苛立ちが込み上げる。
「行く手を塞がれた感はすごいが、振り出しまで戻された訳じゃない。水の魔力を得意とする一族を洗いざらい探ってみることにするよ」
エリオットの前向きな発言にカルロスが「お願いします」と感謝の気持ちを返した時、前方に見えてきた騎士団の詰め所の門から、慌てた様子で騎士団員が飛び出してきた。
ただならぬ雰囲気を感じ取ったエリオットはカルロスから腕を離し、「おーい」と声をかけた。すると、エリオットとカルロスに気づいた騎士団員は、急ぎ足でふたりの元へとやって来る。
「何かあったのか?」
「……昨晩捕縛しましたあの者がまた暴れまして、団員が怪我を。回復薬をもらいに医局へ行ってきます」
昨晩、町の飲み屋で暴れている男がいると通報があった。泥酔して暴れているのだろうと踏んで団員三名で現場に向かったのだが、その男は酔ってなどいなかった。闇の魔力にのまれ、心を乗っ取られている状態だったのだ。