凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 居合わせた人々に危害を加えてもいたため慌てて三人で取り押さえ、今その男は騎士団の詰め所の地下にある牢に入れられている。
 簡単に報告し、そのまま団員はふたりの横を通り過ぎて行こうとするが、すかさずカルロスが疑問を呈す。

「昨日、回復薬を補充しているのを見かけたが、それでも足りなくなったのか?」

 実は、闇の力によって暴走する者はここ最近増えていて、十ほどある地下牢は半分まで埋まってしまっている。そのため魔法薬の注文数も大幅に上げて対応しているはずである。
 団員はカルロスをちらりと見つつ、言い辛そうに打ち明けた。

「いいえ。数はあるのですが……正直、効果が低すぎて使い物にならないのです」
「まさか、仕入れ先をバスカイル家から別なところに変えたのか? 聞いていないぞ」

 エリオットが憤慨した様子で口を挟むが、団員は否定するように手を小刻みに振る。

「変えていません。けど、効果が薄すぎて、誰かが安い回復薬と中身を入れ替えたのかと疑うくらいです。でも、封はしっかりされているし、ラベルにもバスカイル家のサインがあるし……カルロス隊長の奥様の実家、今何か問題でも?」

(問題だらけだ)

 そう答えそうになるのをカルロスはぐっと堪えて、「確認しておこう」とだけ返すと、ポケットから小瓶を取り出して騎士団員へ渡す。

「ひと瓶しかないが、これも使え」

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