心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 暴力を振るわれているマリアに対しての同情なのか。
 優しかった頃の母ではないと、改めて知らされたことに対する絶望なのか。



 ……しまった。会話が終わってしまった。
 と、いうか、ここはもっと心配したほうがいいのか? 

 信頼されるような会話がわからない……!



 グレイは、とりあえず心配をしているという風な言葉をかけてみることにした。


「あー……その、叩かれた傷とかは平気なのか?」

「治してるから平気……」


 だろうな、とグレイは思った。
 慣れないことをして空回っているのは自分でよくわかっている。どうにもうまく会話を続けることができない。

 こんな時にレオがいてくれたら楽なのに……と思ってしまったことを、グレイは悔やんだ。

 まさかあの男を頼りに思う日がくるとは。
 
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