心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜
19 会話は難しい(マリア)
マリアは戸惑っていた。
先ほどやってきたグレイが、眼帯を外すなりこんなことを言ってきたからだ。
『お前と話をしにきた』と。
話? 話をするって……どうすればいいんだろう?
マリアはグレイ以上に誰かと会話をしたことがなかった。
客である貴族とのやりとりはもちろん、全てイザベラやネズミ顔の執事キーズが行っている。
マリアはいつも一方的に話しかけられるだけだ。
誰もマリアの意見など聞こうとしないし、マリア自身も話したいという願望はなかった。
マリアはどうしていいのかわからず、とりあえずグレイが何か言い出すのを待ってみることにした。