心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「…………」

「…………?」


 ところが、グレイは険しい顔でずっと黙り込んでいる。
 ここは自分から何かを言った方がいいのか? でもなんて言い出せばいいんだ? とマリアが戸惑っていると、グレイが口を開いた。


「イザベラから、暴力を受けたりしているのか?」


 この質問に正直に答えてもいいものなのか、マリアは迷った。

 良くないことだというのはなんとなくわかっている。
 でもグレイに対して嘘をつきたくない……という思いがマリアにはあったので、その質問に正直に頷いた。

 すると、いつもならすぐに次の質問がくるはずなのに、グレイの口から出た言葉は少し違っていた。


「マリア……その、実際に何をされたのか話せるか? こんな事をされたとか、言われたとか、そういうのを教えてほしい」



 マリアが話す?
 


 グレイの質問に頷くか首を振るだけだと思ったが、どうやら違うらしい。
 これが『話にきた』ということなのかと、マリアは困った。
< 147 / 765 >

この作品をシェア

pagetop