心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「…………」
「…………?」
ところが、グレイは険しい顔でずっと黙り込んでいる。
ここは自分から何かを言った方がいいのか? でもなんて言い出せばいいんだ? とマリアが戸惑っていると、グレイが口を開いた。
「イザベラから、暴力を受けたりしているのか?」
この質問に正直に答えてもいいものなのか、マリアは迷った。
良くないことだというのはなんとなくわかっている。
でもグレイに対して嘘をつきたくない……という思いがマリアにはあったので、その質問に正直に頷いた。
すると、いつもならすぐに次の質問がくるはずなのに、グレイの口から出た言葉は少し違っていた。
「マリア……その、実際に何をされたのか話せるか? こんな事をされたとか、言われたとか、そういうのを教えてほしい」
マリアが話す?
グレイの質問に頷くか首を振るだけだと思ったが、どうやら違うらしい。
これが『話にきた』ということなのかと、マリアは困った。