心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「なんか……グレイ、いいお兄ちゃんやってんじゃん!」

「はぁ?」

「いいなー! 俺もマリアと同じくらい優しくされたいよ!」

「別にマリアにも優しくなんてしてないだろ」

「え? 無自覚?」


 ニヤニヤしていたレオが、急に真顔でグレイを見つめてきた。
 少し小バカにしたようなその顔に、よくわからないがイラッとしてしまう。



 なんだ……? 優しく……だと?
 俺が人に優しくできるわけがないだろ。ずっと心がないと言われてきた俺が。
 そもそも『優しさ』がよくわからない。



「まぁいいや。とりあえず、早くマリアに何か食べさせてあげないと」


 レオが諦めたかのように話を終わらせたのとほぼ同時に、遠くから警備隊の鳴らす鐘の音が聞こえてきた。
 警備隊が目的があって動いている時にしか鳴らさない鐘の音。

 その音を聞いてすぐに、グレイはボソッと声を出した。


「近づいてる……?」


 音は確実にグレイの家の方向に向かって来ていた。
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