心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜

30 解放されたマリア


 次の日グレイが目覚めると、目の前には気持ちよさそうな顔ですやすやと眠っているレオがいた。

 いつもであれば客室のベッドに寝させているのだが、昨日は力尽きてそのままグレイのベッドで寝てしまったらしい。



 ……それに気づかなかったくらい、俺も深い眠りに落ちてたってわけか。



 レオと同じベッドで寝てしまったのを誰にも見られていないといいのだが……と思いながら、グレイはベッドから降りた。

 空はまだ少しだけ暗く、時間を確認しなくても早朝だということがわかる。

 グレイは静かに自室を出ると、近くにある部屋の扉をノックもせずに開けた。
 マリアのいる部屋である。


「グレイ様。おはようございます」

「……マリアは?」

「まだ眠っておられます」


 一晩様子見でついていたガイルが、突然やってきたグレイに驚きもせず答えた。
 昨晩の疲れも徹夜の疲れも全く感じさせないガイルに、呆れるようなため息しか出てこない。
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