心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「マリア……お前、風呂を知らないのか?」
「浄めの力があれば、不要ですからね。一度も入ったことがなかったとしても、不思議ではありません。別邸にはメイドもおりませんでしたし」
「メイド……。確かに……」
いくらメイドがいなかったとしても、母親がいたはずである。
我が子を一度も風呂に入れなかったのか……と、グレイは呆れた。
身体を浄めるという目的以外にも、風呂には心を落ち着かせたり癒す効果などもあるはずだ。
いくら浄めの力があるからといっても、一度も入れていないとは信じられない。
まさか風呂の存在すら知らなかったとは。
グレイがチラッと視線を向けると、まだ何も言っていないというのに、ガイルは「かしこまりました」と言って部屋から出て行った。
本当に優秀な執事だな。
ガイルも同じことを考えていたからかもしれないが……。