心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜

32 可愛いマリアのために張り切る使用人たち


「……これは一体どういうことだ?」


 食堂に入ったグレイは、ご馳走の並ぶ長いテーブルの上を見て思わずつぶやいた。

 マリアのために料理長が腕を振るっている……という話は聞いていたし、たくさんの料理を用意していることには文句はない。

 グレイが引っかかっているのは、それ以外の部分である。

 暗い色のインテリアが多いヴィリアー家に似つかわしくない、ピンク・黄色の明るい花がテーブルの上を華やかに飾っている。
 
マリア用に用意された椅子の上には、こちらも今までこの家で見たこともないような花柄のクッションが置かれていた。

 並んでいる料理だって、いつもよりも色とりどりだ。



 ……ここは一体どこだ?
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