心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「もういいっ!!」

「え? その意味はなんですか?」

「あとで誰かに教えてもらえっ! それから、敬語は使うな!」


 エドワード王子はそれだけ吐き捨てるように言うと、プイッとマリアに背を向けて走りだしてしまった。
 使用人の何人かは王子のあとをコソコソと追いかけている。

 その場にポツンと残されたマリアのもとに、王宮の執事が申し訳なさそうな顔をしながら近づいてきた。


「聖女様、大変失礼しました」

「い、いえ」


 執事は少し疲れたような顔をすると、「馬車までご案内いたします」と言ってグレイとマリアの前をゆっくりと歩きだした。

 マリアが歩きだすとグレイがスッと手を差し出してきたので、マリアは嬉しそうにその手をつなぐ。

 今までほとんど人に触れることのなかったマリアは、グレイと手をつなぐのが好きだった。
 ……とはいえ、グレイとマリアの歩調があまりにも違いすぎていたためすぐにまた抱き上げられてしまったのだが。
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