心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「それにしても、お前は本当に兄が好きなんだな。俺にも兄がいるが、兄に婚約者がいたら悲しくなるとかまったく気持ちがわからん」
エドワード王子が不思議そうに首をふりながら言っている。
執事が目の前にいる王子にも聞こえないくらいの小さな声で「それは男同士だから……」と囁いたのを、ガイルだけが聞いていた。
「お兄様のことは、だい……好き」
マリアが少し頬を赤くしながらそう言うと、エドワード王子がムッとしたようにまたジロッとマリアを睨みつけた。
「でもその大好きなお兄様とは結婚できないんだから、俺と婚約者になるっていうのは理解できたか?」
「ううん」
マリアはフルフルと首を横に振る。
「なんでだよ!!?」
「だってお兄様に婚約者がいないなら、マリアもいらないもん」
「お前な……」
何度もアピールしているのに即答で断られ続けるエドワード王子は、はあああーーと大きなため息をついて頭を抱えた。
最初こそ空気が凍りつきはしたものの、まだ7歳の少年少女が結婚やら婚約やらの話を真剣にしている姿はとても微笑ましい。
(エドワード殿下、がんばって……!)